乾くるみの『イニシエーション・ラブ』を読んで

『イニシエーション・ラブ』: 乾くるみ

本の帯に、「必ず二回読みたくなる小説などそうそうあるもんじゃない。」と書いてある。この小説を通勤電車のなかで、1週間くらいかけて少しづつ読んで、もうすぐ読み終えると思ったときに、あれ?と思って、読み返し始める、それが「必ず読み返したくなる」ということでしょう。記憶の曖昧さを盲点にしたミステリーです。それに、主人公の鈴木くんとマユの恋愛の行方にのめり込んでしまったら、ますます読み返すことになってしうでしょう。でも、短い時間に最後まで一気に読み切ると、多くの矛盾に気がつきます。トリックに気がつかないと、男が悪者のままで終わってしまいます。まあ、世の中の恋愛悲劇は、だいたいは男が悪いので、それはそれでしょうないのでしょうか。

トリックのことは置いといて、この本の題名はイニシエーション・ラブ(Initiation love)です。青春時代、十代後半から二十代の恋愛がイニシエーション・ラブでしょうか。その頃に元彼、元カノがいた人は、ほろ苦い気持ちが湧き上がってくるでしょう。熱病のようだったイニシエーション ・ラブは、太田裕美の『木綿のハンカチーフ』の歌詞のように、距離(離れ離れ)に脆弱で、環境の変化、新しい出合い、つまり成長による価値観のズレによって、冷めていく恋愛でしょうか。それに、この小説の背景は1980年前半です。携帯電話もラインもメールもありません。今よりずっと遠い距離でした。

さて、恋人マユを静岡に残して東京に転勤になった鈴木くん(たっくん)は、週末毎に車で静岡に帰ってマユと過ごしていました。それが聡明で、美人の同期入社の石丸美弥子と恋愛関係になってしまいます。マユと別れ、美弥子の部屋、彼女と二人でいるというのに、なぜか別れたはずのマユの思い出が胸に溢れてきた….彼女はいまどうしているのだろう…….。

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