綿矢りさの『夢を与える』を読んで

『夢を与える』:綿矢りさ

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2001年高校生のときに書いた『インストール』は強烈なデビューでした。2004年19歳の最年少で『蹴りたい背中』で芥川賞受賞、そして2007年の『夢を与える』は芥川賞受賞後の第一作です。私と、一人称で書いた前作と違い、芸能界という社会を取り上げた三人称の小説です。綿矢りさを読むと、いつもその才能の1/10でも自分にあったらな思ってしまいます。きっと、綿矢りさは100mの散歩して、見たもの、感じることを原稿用紙で何枚でも書けるでしょう。
でも、この小説は、才能があっても想像力だけでは書けないはずです。芸能界を取材して精査したのでしょう。それにしても大学生のとき書き上げた小説ということになります。

前作と違い、この小説には多くの人物が登場します。その人たちとの絡みに、主人公の揺れ動く心理を投影しながら、物語が進んで行きます。

主人公の夕子は虹から生まれ落ちたような、現実離れして可愛い完璧な赤ん坊だった。
夕子の母となる幹子は、付き合っていたハーフのトーマに結婚のことを持ち出したことが原因で、別れ話を持ち出される。やっとの思いでトーマとの肉体関係を復活させ妊娠し、結婚を迫った。子供が生まれた。天性の可愛さは、二人を変えってしまった。

夕子を雑誌社のカメラマンに一目で気に入られ通販カタログ誌のモデルになり、そして大手チーズ会社のCMに起用される。子供がチーズを食べながら成長する様を長年に渡って撮り続けるという半永久契約だった。このCMで多くの人に知られるチャイルドタレントになる。大手芸能事務所に代わり、連ドラ、映画、バラエティー、雑誌のインタビューと仕事が増え、清純派アイドルとしてブレイクする。夕子は契約に縛られ芸能界という有刺鉄線の柵の中で、利益を生む商品として扱われながらも、笑顔で可愛い役を演じ続け、未来が見えないまま走り続けていた。

一目惚れ、恋をする。初めての男—–スキャンダル—–

芸能界では清純アイドルは半永久的ではないし、観る側も半永久的ではありません。どの業界にも言えることでしょう。半永久を信じていると、失墜の悲劇にあうでしょう。ある瞬間に決断しなければ、有刺鉄線の中で惨めな姿で死んでしまうことになります。

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