村上春樹と安西水丸の『象工場のハッピーエンド』

ときどき思い出したように、この薄い文庫本を本棚から抜き出して眺めている。1983年にCBS ・ソニー出版から刊行され、1986年に新潮文庫として文庫化されたようです。

『象工場のハッピーエンド』:村上春樹 安西水丸 (画)

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1983年ですから、村上春樹は30代前半、小説家に専念しようとした頃に書いた作品でしょう。村上春樹と安西水丸(画)の共著で、エッセイ集と言うよりは、詩のような文とすごく短いショートショートで、イラストはカラフルながら奥行きを抑えて文をじゃましていない。だから文も絵も眺めるように見れる。

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背景は村上春樹が高校生だった、1960年代の後半からで、私には懐かしい。懐かしいと言っても、村上春樹は明るい瀬戸内海に面した神戸育ち、私は暗い日本海の漁村生まれ、羨望の懐かしさである。

「ある種のコーヒーに飲み方について」

その午後にはウィントン・ケリーのピアノが流れていた。ウェイトレスが白いコヒー・カップを僕の前に置いた。ぶ厚い、重いカップで、テーブルに置くときにカタンという気持ち良い音がした。まるでプールの水底に落ちた小石のように、その音は僕の耳にずっと残っていた。僕は16歳で、外は雨だった。

それは港街で、南の風にはいつも海の匂いがした。一日何度か遊覧船が遊覧船が港を巡り、僕は何度もそれに乗って大型客船やドッグの風景を飽きもせずに眺めたものだった。——–

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そして、ショートショートには村上春樹の個性が充分にある。

「鏡の中の夕焼け」に好きな文章がある。

—昨年の春、街の広場でバザールが開かれ、そこで私は妻と言葉がしゃべれる犬を交換したのだ。私と取引相手のどちらが得をしたのか、私にはよくわからない。私は誰にもまして妻を愛していたけれど、言葉がしゃべれる犬は何にも珍しい存在であるからだ。—-

妻のことを想像して、クスッと笑いながら読んでいる。もっとも、自分が骨董市のガラクタと交換されないように気をつけないと。

さて、本を本棚に返しておきましょう。

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