又吉直樹の読書のすすめ『夜を乗り越える』

『夜を乗り越える』:又吉直樹

僕は小説に救われてきました。好きすぎて自分でも小説を書きました。

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又吉直樹が、文学の面白さを読者に分かってもらうおうと、真剣に考え抜いた力作です。

本の題名『夜を乗り越える』は本書の第4章「太宰治と自分」の文章から引用しています。

あの夜、六月十三日さえ乗り切っていたら、「全部嘘でした」ができたかもしれない。それが、五回目の自殺未遂になっていたかもしれない。でもいろいろ整いすぎたんでしょうか。ふたりは、その夜はどうすることもできなかったのかもしれません。

その夜を乗り越えないと駄目なんです。

文学との出会い

又吉直樹が中学一年のとき教科書で芥川龍之介の『トロッコ』に出会い、中学二年のとき友達から借りた『人間失格』で文学に目覚めたことは多くの著書で述べらている。

この二冊については、又吉直樹と同じような感想を持っている人は多いのではないでしょうか。『トロッコ』は、子どもの頃、無我夢中で遊んでいて、運が悪かったらとんでもないことのなっていた。そんな怖い記憶を呼び起こす。『人間失格』は、又吉直樹と同じように、自分と重なるのは、主人公大庭葉蔵のワザを見破った竹一とのやりとりでしょう。

ただ又吉直樹が『人間失格』を読んで揺さぶられたのは中学二年生です。やはり普通ではないでしょう。早熟で混沌としたものを自覚していた。それに国語の授業ではひたすら国語辞典と便覧を読んでいたそうです。風を待つ風鈴、そして大きく短冊を揺らした風が『人間失格』だったのでしょう。

それまで僕は、誰ともキャチボールができませんでした。ひとりで考えひとりで壁にボールをぶつけていました。自分の頭の中で考えがめぐるばかりで答えが出せませんでした。変な人間が生まれてきてしまった。もうどう生きていったらいいのかわかりませんでした。

創作について

東京の吉本興業の養成所NNCに入って、お笑いのネタから小説『火花』を書くに至る経緯を述べている。

吉祥寺と三鷹にある古本屋をほぼすべて廻りました。—-何軒も見て歩き、店の表に出ているワゴンの中から安いものを買いました。—歩き疲れたらどこかお店に入ってネタを書きました。本を読む、ネタを書く。散歩する。これしかやることはありませんでした。

古本屋のワゴンで数百円で数冊買える本を選んでいた。それが又吉直樹の幅広い文学を読んだ原点でしょう。

当時僕がもとめていたのは、自身の葛藤や、内面のどうしようない感情をどう消化していくかということでした。近代文学は、こんなことを思っているのは俺だけだという気持ちを次々と砕いていってくれました。

自分で書いてみて、読み方、鑑賞の視点が変わった。

読むInput, 書くOutput、読み方が変わる、書き方が変わっていく。そして天井を突き破ることができるのがプロの物書きなんでしょうか。でも、一般の読者にもあてはまります。

十八歳のとき、初めて小説を書きました。——でも原稿用紙で十枚しか書けない。—–え、小説ってどういう構造になっているんだっけ。どんな文体が、構成が、方法があるんだっけ。その時から初めてそういう視点でも小説を小説を読むようになりました。

俳句を作ることによって、他の方が作った俳句を読むのが楽しくなりました。—–本当に俳句を鑑賞しようと思ったら作ってみないとわかりませんでした。

毎回書き上げると八百字はある。多い時は千六百字もある。それを四百字にするのですが、ごっそっりカットするのではなく、内容はそのままで言葉を置き換えて圧縮する作業を続けました。

僕の作り方、毎回まず小論文のようなものを書き、それを漫才に落とし込んでいくというものでした。必ずひとつのテーマを持ち、ネタを通して何かを伝えたいと本気で思っていたのです。

「第2図書係補佐」:この連載では読んでくれた方に、紹介する本をちゃんと手にとってもらうためにはどうしたらよいのかを真剣に考えました。

なぜ本を読むのかー本の魅力

私がマーキングした一部を引用します。

本を読んで、一番好きなのがこの感覚の確認ー共感の部分です。それに加え本の魅力のもうひとつに感覚の発見というものがあると思います。

十年に一度みたいな、即効く本もあります。一方でそういう本に出会うために読んでいく過程で通り過ぎた本もゆっくり効いてきます。読み返した時にまた別の部分が響くこともあります。本には捨てるところがありません。

文化は継承していけばいい。すべてゼロから始める必要はない。先入観や他人の考えや経験を自分のものにする

見当外れの意地悪な読み方をする人間は、本来その本が持っている能力を封じ込める作業をしているようにも見えますし、読書を楽しみたい僕にとっては有害だから嫌いです。

純文学が回りくどいとか、何を書いているかわからないと言われることがあります。でも、そんな簡単な、簡潔な表現できない時があるのです。本の中から一行だけ抜かれても、言葉を差し出されても無理です。

大目次

第1章:文学との出会い

第2章:創作について

第3章:なぜ本を読むのか

第4章:僕と太宰治

第5章: なぜ近代文学を読むのか

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