佐藤浩市と本田翼主演の映画『起終点駅ターミナル』を観て

原作は桜木紫乃の『起終点駅ターミナル』

良い映画でした。

昔懐かしく、寂寞とした釧路の風景を背景に、行き場を絶った老弁護士と行き場を見失った少女の間に、親と子供のような感情でもなく、男と女の恋でもない、ほのかに匂う霧のような感情が生まれていく。そして、それが互いの「終着駅」を「始発駅」と変えていく。

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『佐藤浩市』演じる弁護士の鷲田完治は旭川の地方裁判所に裁判官だった。「同じ女を心の中で二度捨て」「家族も捨てた」道徳的な責めを負っていた。エリートコースの東京地方裁判所への転勤を辞して、釧路に留まり弁護士事務所を開いた。35歳で彼は釧路を人生の「終着駅」に選んだ。人との関わりを避け国選弁護士しか引き受けず、細々とした生活を送っていた。

65歳になったある初秋の裁判で、『本田翼』演じる水商売で働く少女、椎名敦子の覚醒剤使用事件を国選弁護人になった。彼女は初犯で、実刑判決が下るような事件ではなかった。人と関わらず、人の相談も受けない彼が、裁判後に突然訪ねてきた彼女と知らず知らず関ることになる。

印象的なシーンがある。一つは、突然訪ねて来た彼女と、彼が料理したザンギ(唐揚げ)で夕食を共にするシーンです。佐藤浩市自身が実際に揚げたザンギで、そのせいか美味しそうに食べる少女役の本田翼の演技も自然である。もう一つは、彼女は釧路から出る決断をする。駅まで送った彼は、別れぎわに彼女を固く抱きしめ「もう二度とここには帰って来るな」と言った。「終着駅」が「始発駅」になったクラマックスシーンです。

映画を観てから、桜木紫乃の原作を読みました。映画はほぼ原作にそっていて、佐藤浩一、本田翼のイメージで自然に読めました。

直木賞受賞の、ラブホテルを舞台に浮かびあがれないような男と女の性愛関係を書いた『ホテルローヤル』は、忘れてしまう小説です。『起終点駅』は記憶に残る小説です。

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