大人の英作勉強:太宰治の『走れメロス』
『走れメロス』は短編小説で、疾走するようなリズムの文体で書かれている。
太宰治に影響受けて小説を書き始め、芥川賞作家になった綿谷りさの卒業論文のテーマは『走れメロス』であったという。それも原稿用紙で150枚以上書いたと、何かの本で読んだことがあります。論文にはどんなことが書かれていたのでしょうか、芥川賞作家の論文を読んでみたいですね。
『走れメロス』において、メロスが暴虐な王に人質として差し出した竹馬の友セリヌンティウスのモデルは檀一雄だと言われています。これは間違いないようです。檀一雄の著書『太宰と安吾』の「熱海行」にこのことが書かれています。檀一雄は太宰の妻初枝に頼まれて熱海に滞在している太宰にお金を届けに行く。 しかし、その額は宿代、遊興していた料亭、居酒屋、遊女屋への払いには足りるわけがなかった。太宰は檀一雄を人質として宿に残して、東京に金策に戻る。一日二日で必ず戻ると言って出た太宰は、何日たっても戻って来ない。金を立て替えた宿の主人と檀一雄は太宰を探しに東京へ行く。予想通り太宰は井伏鱒二の家にいた。障子を開けると太宰は井伏鱒二と将棋をしていた。つまりモデルと言っても太宰がメロスのように疾走して熱海に戻ったわけではない。ただ、檀一雄は「待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね」と言った太宰の声がいつまでも耳に響いてくる、と書いている。どこかユーモアがある話です。
『太宰と安吾』
原文:太宰治『走れメロス』から引用
路行く人を押しのけ、 跳ねとばし、 メロスは黒い風のように走った。 野原で酒宴の、 その宴席のまっただ中を駈け抜け、 酒宴の人たちを仰天させ、 犬を蹴とばし、 小川を飛び越え、 少しずつ沈んでゆく太陽 の、 十倍も早く走った。 一団の旅人と颯っとすれちがった瞬間、 不吉 な会話を小耳にはさんだ。「いまごろは、 あの男も、磔にかかっている よ。」 ああ、 その男、 その男のために私は、 いまこんなに走っている のだ。 その男を死なせてはならない。 急げ、 メロス。 おくれてはならぬ。 愛と誠の力を、 いまこそ知らせてやるがよい。 風態なんかは、 どうでもいい。 メロスは、 いまは、 ほとんど全裸体であった。
私の翻訳(英語勉強のための翻訳です)
Pushing and shoving people out of the way, Melos ran like a blast of the black wind. He tore through a drinking party in a field, frightening the partygoers. He kicked dogs and jumped over streams, running ten times faster than the sinking sun. As he passed a group of travelers, he overheard an ominous conversation: “By now, that man must be crucified.” Melos realized that he had been running so hard for this man, and he couldn’t let him die. He had to hurry and never be late. It was a time to prove his love and integrity, and he didn’t care about his appearance. Melos was almost naked.