『対訳 万葉恋歌』Love Songs from the Man’yoshu
万葉集を愛読しているわけではありません。丸善の洋書コーナーで、たまたま開いた『対訳 万葉恋歌』の艶やかな切り絵に惹かれて買いました。きれいに読んでいます。
切り絵だけではありません。そうそうたる顔ぶれの共著者です。英訳は「リービ秀雄」、解説は「大岡信」、冒頭エッセイは「ドナルド・キーン」、そして切り絵は「宮田雅之」です。35 編の万葉恋歌が収録されいて、歌と解説はすべて英文に対訳されています。大事にしている本の一冊です。
リーブ秀雄の言葉の一部を引用します。
—–万葉集のなかでも、恋の歌のように、日本文化の第一黄金期時代を実際に生きたあの人たちの最もプライベートな心情をうったえた表現を日本語の外へ伝達しようとしたとき、翻訳には創作とおなじくらいのスリルと感動がある。
本書はしかも、古代人のよろこびと悲しみに満ちたさまざまなプライベートな瞬間、エロスの微妙な動きを次々と輝けるヴィジャル・アートに「翻訳」した宮田雅之氏の名作と、現代における詩歌解釈の第一人者である大岡信氏のコメントがあるので、英訳するという伝達のスリルは、多次元のそれとなった。
1200年の歳月を越えて、現代人の心の響きあう、「世界文学」として万葉の新しさが、この本のなかにある。
内容の一例
人妻に
言うは誰がこと
さ衣の
この紐解けと
言ふは誰がこと 読人不祥Translation by Ian Hideo Levy
Whose Words are these,
spoken to the wife of another?
Whose words are these,
that bad me untite
the sash of my robe? Anonymous大岡信の解説の一部
「わたしは人妻よ、その私に向かって、着物の下紐を解けと言うのはどななたのおことば?」という意味だが, ………
…….さてこの歌は女性が作った歌だろうか。私にはとてもそうは思われない。男が作って男どもが愛誦した歌にちがいない。「人妻」は性の願望の対象としての人妻で、万葉のうたびとたちは人妻との秘密の恋テーマに特別な愛着を示した。
その他
中古本でしか手に入らなかもしれません。