ひろさちやの『「貧乏」のすすめ』を読んで
「金持ちイコール幸せではない」、「貧乏人イコール不幸ではない」と受け取り、貧乏人は貧乏を楽しみ、幸せになる方法を述べた本で、貧乏から抜け出すためのハウツー本ではありません。最初に、お互い様の意識、助け合っていた時代の「貧乏の世間学」、次に、金持ちの「資本の論理に毒されるな」、さらに、「清貧の美学」は金持ちの思想だまされてはならない。そして「貧困の宗教学」と、マクロな視点で「幸せな貧乏」を述べています。このような視点で貧乏を考えたことがないので勉強になります。幸い、金持ちの限りない欲望に比べれば、貧乏人の望み、欲望はささやかです。考え方しだいで幸せはすぐ手に届くところにあるのでしょうか。
著者は東大文学部印度哲学科卒業、長年気象大学校教授を務め、仏教を中心とした宗教学全般についての著書が多数あるようです。
優しい穏やかな本ではありません。現在の日本の資本論理、金持ちに対しては、「資本の論理に毒されるな」「金持ちに迎合するな」「金持ちは軽蔑しましょう」と厳しい言葉を使っています。貧乏側に立つ著者の論理には納得できる所も多くあります。
私もいままでの延長線上にある経済論理には不安を持っています。大手企業も少し業績が悪くなると大リストラです。それも安易に慢性化しています。世界的ブランドメーカーが何度もリストラを繰り返すのは情けなくなり、もう心の中ではブランドではなくなってしまいました。国内工場を閉鎖し、海外工場で作った製品を、職を失った人、万年契約社員として働いている人にも、あの手この手で消費させようとします。また、経団連はお決まりの円安歓迎です。賃金上昇は僅かで輸入物価の上昇です。こんなグローバル経済ではとても賃金アップー消費拡大ー賃金アップのサイクルにはならないでしょう。
「少欲知足」、欲望を少なくし、足るに知る心を持て、釈迦の教えだそうです。「欲しいと思う物を買わず、必要な物だけを買いなさい」、そして貧乏でも楽しめる生活に変えなさいと。著者は言っています。
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