映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』は良かった!

映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』を観て

出典 映画のポスター撮影

映画の最後のシーンは、玉川上水の川岸に腰の高さほどに咲いている紫陽花の後ろで、向かい合って立っている太宰治(小栗旬)と山崎富栄(二階堂ふみ)
太宰治は富栄に言う。
「もう少し生きてみようか」
それに対して富栄は、
「今しかない。今を逃せば一緒に死ぬことはできない」
そして、水のなかで太宰治演じる小栗旬がアレっといった顔で目をあける。最後のカットでした。

上水に飛び込む直前の状況は誰も知らない。解き明かすことはできない。しかし、映画のようだったのではないかと思っています。

映画を観る前は、映画の内容に期待したのではなくて、監督の蜷川実花がスターリングした3人の女優、宮沢りえ(正妻の津軽美知子)、江尻ユリカ(愛人の太田静子)、二階堂ふみ(愛人の山崎富栄)、そしてモノクロームでしかイメージできない太宰治の世界をどんな鮮やかな色立体の映画に仕上げたのかに興味がありました。

しかし映画を見終えての感想は、内容が良かった。「ヴィヨンの妻」、「斜陽」を発表して小説家として頂点にまで登りつめた太宰治が、なぜ『人間失格』を書き始めなければならなかったか、なぜ最後の小説にせざる得なかったのか、ベストセラー小説誕生までの裏側を、(太宰を支え続けた正妻の美知子)、(斜陽の原案となった日記を提供して太宰の子供を産んだ太田静子)、(最後の愛人で太宰の小説に生きて登場することができなかった山崎富栄)との関わり、小説よりも奇な事実と事実の空間を巧みに埋めた映画になっている。

太宰の最期の2年間を凝縮したエンターテインメント映画ではあるが、短いカットに太宰治の作品のキューが埋め込まれていて、精査された構成になっている。

やっぱり映像は良かった。レトロ鮮やかな配色が頭に残ってしまう。

二階堂ふみが演じたこの映画の山崎富栄像を自分のイメージとして肯定したい。

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