綿矢りさの『ひらいて』を読んで

『ひらいて』:綿矢りさ

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綿矢りさが19歳のとき芥川賞を受賞した「「蹴りたい背中」を読んだのは、受賞後10年も過ぎたときです。読んで、19歳の小説?あー小説家はすごいなとおもいました。『ひらいて』は、『蹴りたい背中』以来、久々に高校生を描いた小説です。春風にスカートをなびかせるような青春小説ではありません。思春期の心にぐるぐる渦巻くマグマのようなものを抱えた一人の女子高生のゆがんだ恋愛の物語です。女子高生の性描写を同性愛、同性の繊細な関係で表現したところが『蹴りたい背中』から一歩踏み出しています。五感、六感を思いのままに表現できる綿矢りさの小説です。

私のあらすじ

他の子たちは人を好きななる理由がある。かっこいいから、とか、—–。でも私は、彼のどこが好きになったのかをうまく表現できない。
そして私は今、いらだっている。私がこんなにかき乱されているのに、彼は私にほんの少しの関心も寄せない。—-

私、主人公の愛は、同級生の”西村たとえ”に恋をする。気を惹かせるような彼女の行動に、彼は何の関心も寄せない。ある日、階段下の死角になるところで、白い便箋らしきものを読んでいる彼を見かける。
友達に誘われふざけた気分で夜学校に忍び込む。友達をふりきって真っ暗な校舎に入り込み、教室の彼の机の引き出にあった茶封筒の中に手紙の束から1通の手紙を抜き出す。家に帰り封を開けて読んだ。「信じられない」、彼あての手紙は恋人らしい女からのものだった。差出人は美雪、「もしかしてあの美雪なの」。一年生のとき、私、彼と同じクラスだった。入学式では誰よりも目立っていた。しなやかで細く、精巧な人形のような顔をしていて、アイドルのような子がいると囁かれた。しかし、I型の糖尿病の彼女が、制服の裾をめくって注射を打つようになってから、彼女の人気は衰え、友達も去っていった。その美雪がなぜ彼と付き合っているの。
私は美雪に近づいた。「彼への恋心が流れに流れて、なぜ美雪への接近まで変質したのか、自分でもわからない。」、そして再び学校に忍び込み彼の机の引き出しから三通の手紙を盗む。その内容から手紙の”美雪”が美雪であることを確信する。ますます美雪に近づき、美雪と同性愛の関係になって、彼から美雪を奪おうとする。

自らの身体をすべて私に任せて、瞳を未知の恐怖にちらちら動かし、しかし従順に刺激反応して潤みを増してゆく美雪を見つめていると、いままで感じたことがない美雪への独占欲が生まれた。—

さらに、美雪になりすまして彼を誘いだし、服も下着脱いで彼に迫る、マグマが噴き出したような行動に、「おまえみたいな奴が大嫌いなんだよ。なんでも自分の思う通りにやってきて、—–」と罵り去られ、事実を打ち明け、謝った美雪からは「愛ちゃん、こわい」と言われる。

恥の意識が貫いた。なぜ彼らを引き裂けると思ったのだろう。彼らは私を無視しても、拒否してもいない。でもそれが余計に、私と彼らとの間の見えない壁を感じさせる。
何も残らない不毛の片思いだったわけではない。ゆがんだ中にも、はじめて彼の眼は語り、美雪との間には愛情とも友情とも言えない、肌恋しい点線のつながりが残ったのでは。

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