綿矢りさの『インストール』を読んで

『インストール』:綿矢りさ

Unknown-17

『インストール』を先に読んでいれば、『蹴りたい背中』の最年少芥川受賞には驚かなかったでしょう。小説家になるという意気込みが感じられます。
綿矢りさが17歳、高校二年生の冬休みに書き上げたそうです。女子高生の生活をランランと書いた小説ではありません。物語は奇想天外です。情景の描写も高校生とは思えません。それに思い切りのいい性表現には驚きます。天才は早熟なようです。

私は高校三年の朝子。無遅刻無欠席、受験勉強で疲れている 。「毎日みんなと同じ、こんな生活続けていいのかあ」と同級生に愚痴る。「一回学校を休んで休養とったら?」そんな流れで、受験戦争から脱落して、学校を休むことになる。

早速学校を早退して眠る。目を覚ますと夕方だった。窓から射す西日に照らされた部屋の汚さに恐怖を感じる。そして大掃除を始める。部屋のなかにあるすべて、机、本棚、コンピューター、ピアノを捨ててしまおう。母子家庭、仕事している母は、ドアが閉まっている部屋を一瞥するだけだった。プライバシーの意味を勘違いしている母子関係である。

物語は捨てたコンピューターから始まる。祖父から買ってもらったコンピューターを捨てることだけは迷った。コンピューターのスイッチを入れたが正常な起動画面にならない。捨てると決意する。

マンションのゴミ捨て場に最後にコンピューターを置くと、地べたに寝転がった。「大丈夫ですか?」小学生くらいの男の子が心配そうに声をかけてくれた。男の子は壊れているはずのコンピューターを「直せる」と言って持ち帰る。

ひょんないきさつで少年の家を訪問する。ドアを開けると、あの男の子(かずよし)が出て来た。家には他に誰もいない。コンピューターは部屋の押し入れのなかに置いてあった。

大人のように冷静なかずよしから「僕と組んで働く?」と仕事をすすめられる。「フウゾクなんです。チャットいうインターネット上のシステムを使って男の人と、エッチな会話するっていうのがこの仕事の内容なんですけど、—」、かずよしは女性に偽ってチャトメールでアルバイトをしていた。私は、かずよし家の鍵を預かり、誰もいない家に忍び込み、かずよしが学校に行っている時間に”みやび”の名前でチャト嬢として押し入れのなかで働くことになった。

物語はこれからです——

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