映画『羊と鋼の森』

映画『羊と鋼の森』

映画『羊と鋼の森』を観る前に、映画館のロビーで30分ほど原作を読み返した。

小説の冒頭は、

森の匂がした。秋の、夜に近い時間の森。風が木々を揺らし、ざわざわと葉の鳴る音がする。夜になりかける時間の、森の匂い。
問題は、近くに森などないことだ。乾いた秋の秋の匂いをかいだのに、薄闇が下りてくる気配まで感じたのに、僕は高校の体育館の隅に立っていた。放課後の、ひとけのない体育館に、ただの案内役の一生徒としてぽつんと立っていた。…〈中略〉
その人が鍵盤をいくつか叩くと、蓋の開いた森から、また木々の援れる匂いがした。夜が少し進んだ。僕は十七歳だった。

将来の目標が見えない高校生が、調律師が叩く鍵盤の音に足を止め、その音の響きのなかに、森の木々の援れる音を聴き、匂いをかいだ。…小説の始まりです。

体育館、山崎賢人が演じる高校生の外山と、三浦友和が演じる調律師の映像で、映画は原作に忠実に始まる。ほっとした。考え過ぎた演出で、原作とイメージがずれるとがっかりする。この映画は原作の時系列に沿っている。

悪人が登場しない優しい物語です。生まれながらの才能がなくても、コツコツ頑張れば、いつか頂点にも立てる。身終えてこぶしを軽く握り、静かにガッツできる。

そう言っても、映画は原作を越えることは難しい。でも、この映画には音がある。ピアノの音がある。調律師が叩く、440Hzのラの音が響きが耳に残る。ピアニストが調律を終えたピアノで弾く曲が聴ける。ピアノを弾く人は、きっと私より深いところで映画を楽しむことができるで­しょう。

文庫本で出版された。読みやすい文章のなかに作家宮下奈都の宝物が巧に挿入されている。

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